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都内に新しくできたショッピングモールについて分析・考察します

池袋 WACCA 前篇

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http://wacca.tokyo/

 

2014/9に池袋に新たにできた商業施設「WACCA」に、先日行ってきました。今回はその内容をまとめたいと思います。

 

施設の概要・良い点

施設コンセプト

公式HPには以下のようなコンセプトであるとされています。

 WACCA IKEBUKURO(ワッカイケブクロ)は、地上8階地下4階建ての、サスティナブル(持続可能)を目指した環境配慮型施設です。外観デザインは、「つながり」をテーマに、木洩れ日が差す居間の様な憩いの場所を目指し「つながったすべての人とともに成長する」リーフ(葉)をモチーフにしています。
1階から4階までの吹き抜けは、光の色温度と明るさが時間により変化し、豊かな表情を生み出します。平面形状と、各階を繋ぐ吹き抜け空間が積み重なる事で、館内を歩くごとに発見が生まれる変化に富んだ空間。明るく開放的なWACCAのつながりを表現しました。

「つながり」の主軸にした、近年のコミュニケーション消費を見越した面白いコンセプトだと思いました。近年若い世代の間では、フェスや映画に行った際に、実際に見たバンドや映画の内容は覚えていなくても、誰とその場に行ったかは覚えているという話題が文化系トークラジオlife でされていましたが、そうした点でも、「繋がり」を主軸に置くことは近年の流れを汲んだものと言えます。

 

 

テーマは食と生活

キッチンスタジオ Lupe

テーマである食の要素としては、5Fにキッチンスタジオを設けています。その狙いは下記のようであるとしています。

・Lupeとは
「食との出会いが、人と人の出会いを育む。」
そんな場所が当館:WACCA池袋5FにOPEN致しました。
「食べる」だけではなく「知る」・「作る」・「学ぶ」・「話す」・「シェアする」・・・

「よく分かると好きになる。」
作る人、食べる人、活かす人、広める人。食に関わるすべてのモノやコト。
その解像度を上げて、隅々まで見えて、聞けて、知ることができれば「食」を今よりずっと好きになれるかもしれません。
その発見を後押しする、Lupe(ルーペ:虫眼鏡) がネーミングの由来です。

http://wacca.tokyo/lupe/

実際にそのエリアを見てきましたが、スペースには大分余裕があり、インテリアも雰囲気の良いものでした。企画の内容によっては非常に人が集まるのではかんじました。

また、イベントのないときは全国各県の食材を使った飲食店としても営業しており、地方都市のとのタイアップも見越したつくりになっています。このあたりも、「つながり」というテーマにかけている部分なのでしょう。

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ヤマハによる、音楽・英語教室

4Fにはヤマハが入っており、習い事要素も満たしています。習い事の施設を入れることは定期的にリピート訪問してもらうという点で非常に重油と言えるでしょう。また、ただヤマハを入れるだけだはなく、隣接した喫茶店スペースを設けることで通っている人同士の交流もはかっているようでした。

 

多くの貸しスペース

もう一つの特徴は多くの貸しスペースを確保しているという点です。施設内には、各所に休憩スペースのような空間が設けられており、そうした場所は、一般の利用者にも貸出を行っています。習い事や、イベントで集まったひとたちが、消費者同士で集まることを促進するために造られており、他の商業施設にはあまり見られない試みと言えるでしょう。

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http://wacca.tokyo/wp-content/uploads/2015/10/wacca_user_guide.pdf

 

これまでの池袋にはなかった商業施設

施設に入って最初に感じることは、池袋には似つかわしくないおしゃれな空間であるということです。正直な所、池袋という場所にはラーメンやカラオケ、電気屋といった雑多な店が多いというイメージがまだまだ強くあります。加えて、近年では池袋は女性のオタクの町という印象もついて来ました。さらに、既存の池袋の商業施設というのは、そのほとんどが大分以前に建てられた建物がほとんどです。東武西武百貨店サンシャインシティ、池袋マルイ、パルコ等、その多くが建設より時間のたったハード施設である言えます。

そうした中で、WACCAはこれまで池袋にはなかったおしゃれな消費の空間という視点を導入しました。

 

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次回後編

今回は施設の概要と、他の商業施設にはない利点を書きましたが、実際に行ってみて、まだまだ上手くいっていなのでは?と感じた点も多くありました。

次回はそうした点にフォーカスして記事を書きたいとおもいます。

 

 

 

何故最近都内に商業施設の建設ラッシュが起きているのか

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1.数値で見るショッピングモールの増加

ここ数年、都内では多くのショッピングモール・商業施設の建設が相次ぎました。ヒカリエ、KITTE、二子玉ライズ等思いつくだけでも枚挙に暇がありません。数値上でもその増加の傾向を確認することができます。下の図は一般社団法人 日本ショッピングセンター協会が発表した資料です。

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全国のSC数・概況 | 一般社団法人 日本ショッピングセンター協会

 これを見ると2012年を底に、増加傾向に移り変わったことが見て取れます。中でも中心地域での増加傾向が強いこともわかります。(※中心地域:当該市・町・村の商業機能が集積した中心市街地)

 ちなみに、図の中では2007年を境に大きく減少していることが目立ちますが、これは大規模小売店舗立地法が2007年に改正されることを見越しての建設駆け込み需要であったと言われています。

www.jmrlsi.co.jp

 

 

 

2.なぜ増加しているのか

 では何故最近増加傾向にあるのでしょうか。その要因は大きく分けて3つあると考えられます。

  1. 近年の東京都の地価の上昇による土地の有効活用の必要性
  2. オリンピックを見越した再開発の中心地としてのSM
  3. 小売業界のトレンドの変化への対応策

では其々について考えてみましょう。

 

 

2-1.近年の東京都の地価の上昇による土地の有効活用の必要性

 ここ数年の東京都の地価は2008年のリーマンショック前の水準までを上昇しており、今後も数年間は上昇見込とされています。地価が上昇するということは、それに見合った収益をあげる施設が求められます。それがショッピングモールというわけです。

 速水健朗氏の著書「都市と消費とディズニーの夢」でも、これに関連した記載があります。ニューヨークグラウンドゼロの跡地に何を建設するかを巡る変遷のなかで、当初はメモリアルパークなどの非商業施設の建設が提案される中、最終的にはニューヨーク一等地の地価に見合う施設が選ばれたというのは、地価と商業施設の関係を考える象徴的な事例です。

 

 

 

2-2.オリンピックを見越した再開発の中心地としてのSM

 流行語にもなった「爆買い」にも代表されるように、近年の外国人観光客は消費のメインプレイヤーです。彼らは観光よりもショッピングを重視する傾向があります。それは2020年に開催されるオリンピックにはピークになるでしょう。

 また、近年の街の再開発を行う際というのは、その中心に商業施設をおくという流れが中心です。二子玉ライズは都市計画・まちづくりの中心に商業施設を置くという点でまさにその典型でしょう。これも「都市と消費とディズニーの夢」内で記載がありますが、近年の「都市間での競争原理の導入」という点が要因として考えられます。人口減少社会に入った現代では、各都市同士での魅力を打ち出すまちづくりの中心に、ショッピングモールが据えられているというのです。

 JRが打ち出す「ステーションシティ」も同様の試みと言えるでしょう。

www.tokyostationcity.com

 

 

 2-3.小売業界のトレンドの変化への対応策

  3つめは小売のトレンドの変化によるものです。下のダイヤモンドオンラインの記事に該当する内容が書かれています。ネット通販への差別化として、体験、モノからコト消費へと小売りのトレンドが移りゆく中で、滞在型・体験型の店舗設計が増えてきているというのです。

diamond.jp

  これまでのショッピングモール・商業施設の建物というのは効率良く販売するために碁盤の目状に分けられたフロアが基本でした。これはモノ消費を前提とした売り方です。コト消費の時代ではこのような建物では対応が難しい。そのため、その変化に対応したハードウェアが求められ、建設ラッシュが起きているとも考えられます。新宿伊勢丹のリニューアルなども、まさにそうした流れを汲んでのものでしょう。

www.nikkei.com

 さらに、これまで好調だったイオンや山田電気といった企業が苦戦を強いられ、その打開策としての店舗改革を行っているというのも、同様の流れを汲むものと言えるのではないでしょうか。

60店舗を一斉閉鎖・・・王者・ヤマダ電機の新戦略

家電量販店も、ライフスタイルの変化ネット通販の台頭などによって、競争が激化している。最大手のヤマダ電機は、2015年の5月、6月に不採算だった約60店舗を一斉に閉鎖した。ヤマダ電機はこれまで郊外を中心に大型店を出店し、価格と品揃えを武器に業界首位に躍り出た。業界で唯一、全国47都道府県に展開している。規模を追求することで売り上げも増やしてきたが、ここにきて戦略の転換を迫られているのだ。そこで始まったのが店舗の改革。一度、閉店させた店をアウトレット店としてリニューアル。店舗展示品や型落ち品だけでなく、中古洗濯機などを買い取り、修理して売り出すなど、リサイクル品の販売にも力を入れる。また10月には東京駅の目の前に、新しいコンセプトの店を出した。これまでのように、商品を一通り並べるのではなく、「最新情報の発信基地」がコンセプト。一体、どういうことなのか?王者の新戦略に迫る。

 

日経スペシャル ガイアの夜明け : テレビ東京

 

 

 3.これらを踏まえて

今後はこうした前提を踏まえて、最新のショッピングモールを探索していきたいと思います。こうした視点を持っていつも行くショッピングモールを眺めてみるのも面白いのではないでしょうか。

 

初めに 掲載方針に関して

最初に

 

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ブログ説明にあるように、このブログでは東京都内に新規に建設・もしくはリニューアルされた商業施設について分析した内容を掲載していく予定です

 

 

 

1.対象について

  • 都内に最近できた商業施設
  • 日本ショッピングセンター協会ではショッピングセンター(ショッピングモール)を下記のように定義しているが、訪問先に特に明確な定義は定めない。
    • 小売業の店舗面積は、1,500㎡ 以上であること。
    • キーテナントを除くテナントが10店舗以上含まれていること。
    • キーテナントがある場合、その面積がショッピングセンター面積の80%程度を超えないこと。但し、その他テナントのうち小売業の店舗面積が1,500㎡以上である場合には、この限りではない。
    • テナント会(商店会)等があり、広告宣伝、共同催事等の共同活動を行っていること。

 

2.掲載予定項目

掲載する際は大まかに下記のような項目に切り分けて書いていきたいと思っています。

  • ショッピングモール立地地域の特性
  • 想定ターゲット層
  • 実際の顧客層
  • 調査先SMの他のSMにはない特長
  • 等々

 

3.その他

 僕は普段は都内で経営支援等の仕事を行っています。そうした中で休日には余暇としてショッピングモールに行くことも多く、その際買い物だけでなく、経営の視点でショッピングモールを見ると違った楽しみ方ができることに気づきました。

そこで、そうした際に気付いたことをメモしていくためにこのブログを始めることにしました。このブログのどこかに面白みを見いだしてみて頂ければ嬉しいです。